院長コラム
Column
絆のホルモン
2019年10月16日
ラグビーワールドカップでは日本代表がベスト8で決勝リーグに進出しました。アイルランドに引き続きスコットランドにも勝利をしました。後世にもかたり継がれる歴史的な試合だと思います。本当にすごいことです。
決してまぐれの勝利ではなく、日本が力をつけてきたからなのでしょう。
そして台風19号で被災された方にも元気をあたえてくれました。
ラグビーの試合を傍から見ていると体をぶつけあって痛そうです。特にスクラムを組むフォワード(FW)は試合を通してもみくちゃにされますが、それでも元気で機嫌よくプレーをしています。
FWは一体感があり、団結が強いという特徴があります。そしていつも仲がよさそうです。FW内で仲が悪いというのは聞いたことがありません。
それはなのでしょうか?
いろいろな理由があるのだと思いますが、そのうちの一つにオキシトシンというホルモンの分泌があげられます。
動物は体を寄せ合うと脳の下垂体から信頼・愛情を生むオキシトシンというホルモンがでるといわれています。いわゆる人や動物同士の絆のホルモンと言えそうです。
常に味方同士で体を寄せ合い練習・プレーをするスポーツはラグビーのFWだけなのかもしれませんね。
ラグビーのONE TEAMやノーサイドの精神と関係もしていそうです。
良好な人間関係が築かれた時にさらに分泌が多くなるとされ、不安やストレスの解消にも関係します。
特に女性では、それに加えて恋愛感情もでてくるとされています。
確かにボディーコンタクトをとることにより、信頼感や安心感がでてくるというのは多くの人が共感すると思います。
応援する観客も隣の人と肩を組んで身を寄せ合っていると信頼や安心感がでてきますよね。
欧米人は挨拶としてハグなどの体の接触を重視しますが、それも人間関係を良好に保つための昔ながら伝えられた知恵なのかもしれません。
確かに感情的にうまくいっていない時てもハグすることよりその怒りが少しは収まりそうです。
医学的にはオキシトシンは乳首への授乳刺激によっても分泌されるホルモンで、陣痛促進剤としても利用されます。
授乳中のお母さんは、愛情と信頼に満ち溢れ心が安定しているのでしょう。
最近ではその効果を利用して自閉症の方への治療薬として応用する試みもでてきているようです。
一方、オキシトシンの量が多すぎると人を信用しすぎるという弊害もありそうです。
オキシトシンを投与すると盲目的に知らない人を信頼してしまいます。不利な取引契約の被害にあう人が増えるそうですので、注意が必要ですね。
その他にもオキシトシンの分泌を増やすにはかわいいペットや子供をみたり、ふれあったりするのがいいといわれています。
今、クリニックではネコのビデオを放映しています。以前は自然のコンテンツを流していたのですが、最近はなぜかネコものばっかりです。
私を含めスタッフがネコ好きというのが一番の理由ですが、患者さんの評判もよさそうです。
ビデオには子ネコの成長が描かれていますが、授乳中の親猫もとても幸せそうです。そして自然と微笑ましい気持ちになってきます。
少しでもクリニックの仲に元気と笑顔が広がればいいですね。
そして日常生活でもストレスが溜まったり、元気をなくした時にはあえてオキシトシンを意識した行動をすることも必要なのだと思います。