院長コラム
Column

慢性の心不全治療の昨今

2017年05月25日

20年以上前の昔は、心臓が弱っているのなら、心臓をしっかり収縮させる強心剤をどんどん投与していこうという治療がよくありました。しかし、長期的な目でみると、強心剤を投与している患者さんのほうが、心不全をおこしやすくなり、寿命も短いことがわかりました。いわゆる痩せ馬にむちを打つような治療は短期間には症状を改善し一見有効のように思うのですが、長い間続けることはよくないということです。

慢性の心不全では、心臓の拍出する力が弱いので、ただでさえもっと頑張れというシグナルが自律神経やホルモンを介してでています。

その状態が長く続くと、どんどん心臓がつかれる。→もっと頑張れというシグナルがでる→もっと心臓がつかれるという悪循環をおこします。

今の慢性心不全の治療はできるだけ長い間心臓に負担をかけないようにする治療が主流です。適切に血圧を管理すること、自律神経やホルモンの悪循環をなくすように、それぞれの興奮をやわらげる薬を使うことが大切です。

このような保護的な治療は短期的には症状が一時的に悪く感じる場合もあるのですが、長い目でみると生命の予後を改善させることが明らかとなっています。昔とはまったく逆の発想の治療です。

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