院長コラム
Column
カウンターショック
2017年06月08日
テレビドラマでは、急変した心停止した患者さんにカウンダーショック!と医者が指示して、蘇生するシーンがよくありました。功を奏しフラットだった心電図が、めでたく正常のリズムをとりもどすというのが多くの場合のあらすじです。
しかし心臓の医者として、数百回以上はカウンターショック(Direct Cardioversion; DC)を行っていますが、残念ながら止まった心臓に対してDCを行って蘇生が成功した経験は一度もありません。
私も医者になる前、ドラマどおり電気ショックは止まった心臓に対して刺激を与えて蘇生する方法なのだと思っていました。心臓を専門にされていない先生の中でもかなり混乱があるのではという気もします。
DCは別名として除細動といいます。細動という不整脈を取り除く行為です。細動には心房と心室細動があり、そとからみると筋肉が痙攣して震えているように見えます。複数の早い電気の信号が心臓の中を低気圧のようにぐるぐると走りまわるため痙攣しているように見えるのです。心室は血圧を支えている部位なので、心室細動になるとそのままでは血圧がなくなり心臓は止まっています。
DCによる直流の電気のショックは、心臓全体を同時に興奮させることにより、走り回る電気信号をリセットすることができます。その結果、細動を含む非常に速い不整脈を停止させ、一旦もとのリズムにもどすことができるという原理です。
心臓が止まっている方をみたら、
まず救急の蘇生を行いながら心電図のモニターをつける。
→心臓の電気の状態を確認する。
→心臓にまったく電気の信号がなく止まっているときは、アドレナリンなどの強心薬を投与して心室細動をむりやりおこす。
→大きな細動の波が確認できればその上でDCをするという手順となります。
いろいろな場所に配備されているAEDは心室細動など致死性不整脈の電気の信号を自動診断し、必要ならDCを行う装置なのです。