院長コラム
Column
隣の芝生
2022年06月05日
医師として、製薬会社、医療機器関連、ディーラーなど多くの会社の担当者を30年近くは見つめつづけてきましたが、人が本当によく入れ替わっていることに気づきます。特に最近ではその傾向が顕著です。
単に担当がかわるということだけではなく、容易に辞める若い人も多そうです。
終身雇用は崩壊しているのだとも改めて気づかせてくれます。
今の時代は会社の都合で勝手に解雇することはできませんので、現状に満足できず我慢をしつづけるくらいなら、いっそ転職しようということなのでしょう。
もちろん不条理に我慢をつづけて働きつづける必要はないですが、その後に満足して働いているのかというのはどうしても気になってしまいます。
なんとかその後も機嫌よくしていてほしいものです。
様々な理由があれど、いずれにしても「隣の芝生は青く見える」ということはありそうです。
情報があふれる時代です。特に意識をしていなくてもSNSや宣伝広告ではこれでもかというくらいに隣の芝生を青くみせてくれます。
自らを思い返してみても若い時代ではその傾向がありました。自分探しの旅にもつながるような気もしてきます。
病気や健康を考えてみてもいろいろ当てはまります。
もう少し若々しく健康にいるためにはこちらのほうがいいですよ。もう少し美しくいるにはこのような治療がありますよ。そしてあなたの人生がかわりますよと。
しかし、一見魅力的にみえることでも、専門的に少し考えるとあまりにも無責任だなとつっこみをいれたくなるフレーズも本当によくありますので、注意が必要です。
また、心の悩みで心療内科を受診される方は、初診後には3回位は主治医を変えるのが普通だそうです。
最初の医師に失望し、隣の医師が青くみえてしまうということです。
しかし、いざ隣の芝生も結局は同じだったということもよくあります。期待が大きすぎると失望も大きくなります。
そしてまた別の青い芝生さがしを続けてしまうのかもしれません。
おそらく周りの環境だけでなく、自分の心の持ちようもあるのでしょう。
解決方法は様々なのだと思いますが、
現状を冷静に受け入れること、不満に思っていることを整理して解決しうる方法を探してみること、視野を広げてまわりを多面的に見渡すこと、比較しすぎないこと、自分に自信もつこと、
などなどが思いつきます。
私自信も偉そうなことはいえませんが。
混乱してよくわからないのなら、気づいたことを少しずつ紙に書き出してみるということもよさそうです
そしてそれが、自分が今存在している芝生を育て、青く輝かせてくれるような気もします。