院長コラム
Column

ポックリ病

2017年09月28日

若い働き盛りの方や学生の方が予期せず突然朝になって亡くなることを通俗的にポックリ病といわれています。中高年の方でしたら、心筋梗塞、解離性大動脈瘤、脳卒中などがポックリの原因になることが多いのですが、特にもとより心臓の機能に異常がなく血圧も正常の方ではその原因のほとんどは不整脈です。

少し前でも元AKBの方や皇室の方が突然死されるという悲しいニュースがありましたが、原因はポックリ病かもしれません。

ポックリ病は日本を含めたフィリピンやタイの東南アジアで多いとされています。夜間睡眠中に夢にうなされたような大きい「いびき」や「うなり声」を出してポックリ死んでしまうということから各国いろいろな呼び名があるようです。

ポックリ亡くなられた方では特異的な心電図の波形の異常を認める場合が多く、その中でも大部分はブルガダ症候群といわれています。スペイン人のブルガダという人が発見したということでこの名前になっているのですが、それ以前にも日本人の先生が気づいて先立って報告されている病気です。

少し細かく言うとブルガダ症候群の患者さんでは、心臓の電気を作り出すイオンチャネル(特にNa)の機能が不十分であるため、心臓の電気的な活動の調節が不安定となり、心室細動を代表としたさまざまな不整脈が出現しやすくなります。心室細動は血圧を支えている心室の筋肉が痙攣を示している状態になるので、出現すればすぐさま血圧が低下し、そのままつづけば突然死の原因となります。30 ~ 50 代の男性を中心に、ストレスや睡眠、飲酒、入浴、発熱などが心室細動の誘因になるとされています。

このタイプの心室細動は自然に停止することもあり、失神の既往を認める人もおられます。

特徴的な心電図を示す人は1000人の中で5人位認められるとされており、健診の心電図でも要精査としてよくひっかかってきます。心電図の波形は体の状態によって変動します。すべての人が突然死のリスクがあるわけではないのでほうっておいても大丈夫の人が多いのですが、危険な心電図の波形、失神の既往、家族歴があるなどの場合は治療の対象となります。

他の病気の場合とは違い一度の発作が命取りになりますので、リスクの高い患者さんでは植え込み型除細動器というカウンターショックの機能をもった少し大型のペースメーカーの植え込みを行います。皆さん機械を植え込むのはいやがられますが、背に腹は代えられません。

昨日まで元気だった働きざかりの若いお父さんがストレスにつかれて寝て次の日には冷たくなっていた、愛する人が突然亡くなられたなどのエピソードは、当事者にとってはその後の人生を左右するほどの悲しいことです。そばから見ていておかしな寝方をしている、意識を失ったことがある、動悸を自覚するなどに気づいた時にはほっとかないで、まずは心電図のチェックをしておくことが大切だと思います。

 

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