院長コラム
Column

臭いものには蓋をしない

2017年10月05日

「臭いものには蓋をする」とは、都合の悪いことや醜聞が他に漏れないように一時しのぎの方法で隠すことのたとえです。とりあえず問題と思っていてもそれを先送りするということでしょう。類語をさがせば山ほどでてくるので、昔からよく使う我々日本人の特徴をよく反映した行動なのだと思います。

物事への考え方は各国いろいろ、おそらくそれぞれ国によって独自の特徴があるのだと思います。

日本は島国であり、和を大切にしてきた国です。あまり自分の意見を表にださず、ぐっと我慢して問題を先送りにしていくほうが上手く物事が回るため、「臭いものには蓋」をする習慣がついてきたのかもしれません。

一方、アメリカや中国などの大陸国家や多くの人種が集まる国では自分の意見をあいまいにして問題を先送りにしているとやられっぱなしになるので、しっかり自己主張し、問題をその場で解決していくのだと思います。

この日本人的特徴は、病気に対する反応にも当てはまるところがありそうです。少し気になる症状や健診で異常を指摘されてもとりあえず「臭いものには蓋」をしておく場合がおおいようで、特に男性の方がその傾向が強いのかもしれません。

病気に蓋をしたことも忘れているようなかなりの楽観的な人も稀にはいるかもしれません。しかし、多くの場合は検査をするのが面倒、仕事で検査をする時間がない。何かよくないことを言われそうで怖いなどが多くの理由だと思います。

「臭いものに蓋」をしたつもりでも、ずっと気にしている人もいると思いますし、症状などが再発すれば蓋が再び開いてしまうこともあります。ずっと気にしながら我慢し続けるほど精神的につらいことはありません。結果はどうあれ、来院された多くの方は長い間悩んでいるくらいならもっとはやくに検査したほうがよかったといわれます。

そして重大な病気の場合、「臭いものに蓋」をし続けた結果、手遅れになることもあります。症状がだいぶ前からあり、検査を勧められていたがそのまま蓋をしていたら、手遅れで手のほどこしようがなくなったというエピソードは日常の臨床でも本当によくあることなのです。早期の診断と治療というのは、あらゆる病気のキーワードです。

おそらく解決できていない問題は何度も周りめぐって目の前に繰り返し現れてくるというのは、病気以外にも当てはまる人生の大切な教訓なのでしょう。やはり「臭いものに蓋」をして問題を先送りにするのではなく、早期に「臭の元を絶つ」ことが大切だと思います。

 

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