院長コラム
Column

虫歯と心臓病

2017年12月25日

狭心症や心筋梗塞などの心臓病の患者さんでは、虫歯が多いとされています。虫歯が多いと動脈硬化が進展しやすいのです。

虫歯や歯周病が動脈硬化を起こすのは、歯周病菌やその菌体成分などが、直接、血管に障害を与えたり、炎症の起きた歯周組織で作られる炎症性物質(CRP、IL- 6など)が血流を通じて心臓や血管に移動し、血管内皮細胞や動脈硬化部分の免疫細胞が活性化されて、動脈硬化を進展させるとされています。

体の免疫力が弱っている時には歯がよく痛くなります。体の免疫力が弱っているときには虫歯菌の繁殖力が強くなっているので、その時には虫歯や歯周病の血液の中に入りやすくなっているので歯の治療の際には注意が必要です。

なぜ炎症が動脈硬化に関係するの?という疑問もあるかもしれません。実は動脈硬化は炎症反応と密接なのです。動脈硬化を起こしている人では普通の人に比較して、血液中の炎症マーカーが上昇しています。

動脈硬化を起こした血管を顕微鏡で調べると、動脈硬化部位に一致して、マクロファージなどの炎症細胞が集積しています。動脈硬化部位では温度が上昇しているという報告もあります。そして動脈硬化症が起きている血管から歯周病菌が直接検出されることも報告されています。

炎症の原因はいろいろありますが、その一因として虫歯が関係しているということです。

心臓病の患者さんでは虫歯には注意が必要です。特に心臓の弁に異常のある患者さんでは、歯の治療の時には注意しろと昔からよくいいます。

口内の虫菌菌が血液内に入って体中にまわると細菌性心内膜炎の原因になりえます。弁の逆流があったり弁の通過障害があるなど弁の血流速度が極端に増加する状態では、細菌の居心地がいいようで傷害された弁に住みついてしまうことがあります。そのため弁膜症の患者さんでは、歯の治療の前には前もって抗生物質をのんで予防しておく必要があります。

また心臓病の方の多くは血液をさらさらにする薬を服用しているため、虫歯の治療時の出血には注意が必要です。

昔から歯科の先生は、抜歯の時には必ず血をさらさらにする薬は中止するようにと指導されていました。しかし、血をさらさらにする薬を中止すると血栓が心配になります。

血栓リスクの高い方では歯の治療時に薬を中止すると血栓ができて脳梗塞などの事故を起こすことが多いことが疫学から証明されています。ガイドラインでは、歯の治療時に血をさらさらにする薬は継続することが望ましいと記載されています。それぞれの立場があるのですが循環器の立場としては可能な限り内服継続です。

心臓病以外でも、糖尿病、アルツハイマー病などに関与するとされています。虫歯菌が直接それぞれの臓器に傷害をあたえたり、咀嚼による刺激がなくなることが脳によくないからです。

まず健康の維持にはまず歯の治療からというのも一理ありです。いくつになっても元気でいるために定期的に歯をチェックし、良好な状態に管理、治療しておくことが大切です。

一覧に戻る