院長コラム
Column
期待に答える
2018年02月17日
冬季オリンピックが日々放映され、日本人選手の結果は気になります。多くの国民が応援し、ぜひメダルをと願っています。
オリンピックなどの世界的なイベントの時には、無条件に応援したくなる気持ちを確認ででき、自分は日本人なのだと再確認させてくれます。
個人的には特におやじ代表の葛西選手が気になります。jumpのような瞬発力を必要とする競技で8回連続のオリンピックの出場、それに現在も現役というのは世界的にも例をみないことです。まさにレジェンド、本当にすごい人だと尊敬します。
緊張の中普段どおりのパフォーマンスを発揮するのは難しいことです。肉体や技術を鍛えることはもちろんのことながら、心を整えるということも大切です。
応援する多くのエネルギーが選手の力になる一方、期待が大きいとそのプレッシャーも半端ではないのだと思います。そして周りの人々が期待すればするほどうまくいかなかった時の失望も大きくなります。
よくよく考えるとオリンピックにでるというということだけでもすごいことなのですが、まわりの期待はどんどん高くなってしまうので少し残酷です。
うまく力を発揮できなかった選手の「周りの期待に答えることができなくて」という涙ながらのコメントは胸につまされます。
期待にきっちり答えるということは本当に難しいことです。自分のことを考えてみても思い通り期待に答えることができないことがほとんどです。
昔、オリンピックでせっかくメダルをとったのに自殺してしまったマラソンの選手がおられました。その後、周りの期待が大きすぎてこころが疲れてしまったことが原因です。
期待すればするほどどんどん理想が高くなり、結果がわるいとそのGAPに苦しみます。それほど期待が大きすぎるということは苦悩の原因にもなってしまうのでしょう。
阪神タイガースは熱烈なファンが多いので有名ですが、ファンの気持ちをうまく処理して運営されています。
関西ローカル版のテレビでは、ファンの気持ちがよくなるように負けた時でもよいところだけを取り上げます。活躍シーンばかりの放映の後に、残念ながら最終的には負けましたというおきまりパターンでは、思わずひっくりかえりそうになる時もあります。
ずっとファンの期待を裏切る弱い時期が続いたためか、ファンも聞き分けがよくなったのでしょう。こころの中では過度な期待は禁物であることをファンはいい形で学んでいるのかもしれません。
期待に答えるというプレッシャーは多くのこころの病にも関係します。親の期待に答えられなかった、周りの期待に答えられなかったという重圧をきっかけにこころが耐えられなくなって発症してしまうのだと思います。
そしてうつ状態によくみられる自分のふがいなさを嘆き苦しむということは、自分自身の期待に答えることができないため、理想と現実の自分とのGAPを受け入れられないということなのでしょう。
しかし期待に答えるのは多くの場合困難です。もし達成できた時でもそれをずっとつづけることは不可能です。
いつも元気に機嫌よくしておくためには、うまくいったらその結果を喜び、うまくいかなかったらその期待を次に回しておくようなタイガース流の少しいい加減なくらいの考え方もいいように感じます。