院長コラム
Column
桜開花
2018年03月17日
温かくなってきました。これでは桜の花もそろそろ咲きそうだなと思っていたら、朝のニュースで四国では開花宣言されたとのことでした。関西でも来週には開花しそうですね。これからいろいろ新しいことが始まりそうで、心も少し踊ります。
やっぱり桜の花は日本の国花であり、昔から日本人にとって特別です。
まず桜の花はその美しさにより見る人の心をつかみます。ほとんどの花は天に向かって咲いているのが普通なのですが、桜の花は下向きに咲きます。あえて下向きに咲く姿は、通る人にぜひ見てくださいと訴えているようにも感じます。
一斉に咲き乱れるところに個性がないという批判的な意見もありますが、みんなで同調・連動して美を生み出している姿は昔からの日本人の特性を表し、多くの人の心をとらえるのだと思います。
記憶をたどれば、幼稚園の入学式の時に母に手を取られて桜並木の道をあるいていたのを今でも時折思い出します。おそらく自分の中に残っている記憶の中で一番古いものです。
そして桜の花はあっという間に散っていきます。その美しさとは別に、別れの寂しいイメージもあり、それが人生のはかなさに例えられる時もあります。
「ねがわくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」の詩にもあるように桜の花のごとく人生を送り、その花の中で終焉を迎えたいというのは昔ながらの日本人の魂の一部なのかもしれません。
「ラストサムライ」という映画では、主演の渡辺謙さんが、ラストシーンで、満開の桜の花をみてperfectといって自ら命を絶つ姿が印象的です。桜の花のごとくにありたいと願うのは、武士道にも通じます。
多くの観光客は、桜、武士道、日本哲学に興味を持ち日本に来られるので、これから日本人としてしっかり理解しておくことも必要かもしれませんね。
ご高齢の患者さんは、この季節になると後何回桜の花をみることみることができるのかと言われる方もいます。自分の人生を桜の花にもたとえられているのでしょう。
そのようなことは言わないで、すっと元気なままでいていただきたいものです。
しかし自らのことを振り返っても、どの位の余命が残されているのかはわかりません。
もちろん元気のままでいるつもりですが、人生の曲がり角を過ぎた今、ふと亡き父のことを思い出すとあと何回桜の花を見ることができるのかということも頭によぎります。
歳を重ねるごとに与えられた人生を減らしていくことはしかたがないことですが、その散りゆくひとつひとつの花びらに少しでも意味を持たせたいものです。