院長コラム
Column
不整脈は大きな心臓に
2018年05月14日
脈がはやくなったり、脈がとんだりする不整脈は、心臓に異常な電気の信号がおきることにより発生するのですが、どのような機序でおきるのでしょうか?
不整脈のおきるメカニズムは3つに分類することができます。
1つ目は通常の脈のように定期的な電気信号が、正常な場所以外にも出現すること(異常自動的の亢進)
2つ目は心臓の筋肉に負担が増えたり、異常な刺激がきっかけにことにより、心臓の筋肉が電気的に不安定になり、電気が暴発してしまうこと(トリガードアクティビティーの亢進)、
3つ目は電気がぐるぐると回転をすること(リエントリー)です。
3つのことが複雑にからみあうことが多いのですが、その中でもリエントリーによるものが多いと考えられます。
ぐるぐる回るためにはある程度の広さが必要です。心臓の筋肉が異常な電気信号に反応しつづけるには限界があるので、小さな場所では回りつづけることができないからです。
そのため大きな心臓では不整脈が発生しやすくなります。
よくみられる代表的な不整脈である心房細動を考えてみます。
人間では、比較的若い人では非常に稀であり、その頻度は1%未満です。
馬では数%程度です。レースの時に急に失速する原因としては突然心房細動が出現することによることが多いのだそうです。
ネズミでは皆無ですが、クジラでは半分位に認めます。
心房細動の犬モデルというのがあります。私自身も犬に対して心房細動の誘発をいろいろ試みて研究していた時期があるのですが、大型犬では条件によってよくおきますが、小型犬では全くおこりません。
人間でも心房がおおきくなるとその罹患率がどんどん増えてきます。心房細動を外科的に治療するMaze(迷路)という手術があります。今でも弁膜症の患者さんに対して弁の治療と同時に行う手術です。大きな心臓を迷路のように分画して心房の中をぐるぐると電気が回転しないようにするのです。
心房細動が長い間つづくと心房がどんどんおおきくなってきます。心房が大きくなると多くのことろで異常な電気信号が発生したり、ぐるぐる回りやすくなるので、そのメカニズムが複雑になってきます。
走り回る暴走族のメンバーがどんどん増員して、いろいろなキャラがでてくるようなイメージです。
根治療法であるカテーテル治療も心房が大きくなりすぎると極端に成績がわるくなってきますので、大きくなりすぎないうちに治療をする必要があります。
心臓がおおきくなってくると不整脈はどんどん増えて心不全も進行します。そのため心臓には過度な負担をかけず、大きくなりすぎないようにしておく意義は高いのです。
そして治療をするなら心臓が大きくならないできるだけ早めというのは治療効果をあげるうえでのキーワードだと思います。