院長コラム
Column
逃げ道を作る
2018年06月02日
日本大学のアメリカンフットボール部員の反則危険タックル行為が、マスコミで取り上げられ非難されています。
選手が監督とコーチの言いならざるをえない追いつめられた状況となり、しかたなくの相手チームのQBを潰すための危険なタックルです。
幸いQBの方は試合に復帰されましたが、危険なプレーをした選手本人もかなりのダメージです。追いつめられて肩を落とし、すっかり元気をなくされています。
監督とコーチの対応の遅さや会見でのふてぶてしさは、悪キャラのボスのような雰囲気ありです。
水戸黄門での権力を笠に弱い立場のものを虐める悪代官と越後屋の姿にも重なります。なんとかぎゃふんと言わして、めでたしめでたしという展開になってほしいと多くの方は望まれているのでしょう。
世間からの非難も考慮されたように除名処分となりました。
選手の人格を支配しあぐらをかいて偉そうにしている指導者に対しては私も腹立ちを覚えますが、結果ありきの魔女裁判のような報道で少しは気の毒なような気もします。
考えられないひどい監督だというレッテルを貼られていますが、考えてみると少し昔はこのような監督はよくいたような気もします。
特にラグビーやアメフトなど激しいチームスポーツではチームをまとめるためにある意味人格を否定するような厳しい規律を強いる指導も少し前まではよくあったのだと思われます。
そして試合前には士気を盛り上げるための激しい言葉が飛び交います。
いわゆる軍隊方式で、上官の言葉には絶対服従で、戦略をつくるのは将官の役割です。
私自身、学生時代ラグビー部に所属していましたので少しはその雰囲気がわかります。しかし私の場合は希望しなくても試合にでないといけないような弱小チームでしたので、多くの精鋭があつまる一流チームとはまったく事情は違いますが。
30年以上前の昔、「スクールウォーズ」というラグビーの人気ドラマがありました。元暴走族などの荒くれもの集団が、全国優勝をなしとげるまでのストーリーを実話に基づいて作られたドラマです。
血の小便がでるまで走り続ける、負けた試合で生徒を全員なぐるなどの過激な指導シーンもありました。そしてルールを無視して危険行為をするような荒くれものの対戦チームもありました。
今となっては問題となりそうなあらすじですが、当時のそれでいいと多くの人は感動ドラマとして共感していました。
非難され除名処分となった監督も自分の時代の監督と同じことをやっていたはずなのにと心の中ではつぶやかれているのかもしれませんね。
もちろん価値観は時代により変わりますし、今の時代このようなやり方がいいとは全く思えません。昔でもその運営方法にあわずやる気をなくし脱落してしまった犠牲者も多かったのだと思います。
そして最も問題なのは、逃げ道のない閉鎖された環境の中で、精神的に追いつめられてしまうと、心が不安定になり元気をなくしてしまうことなのだと思います。そして他人に心を支配されると物事を深く考えられなくなり思考も停止してきます。
学校、チーム、企業などの閉鎖された空間では、このようなパワハラ問題が必ず生まれてくるのだと思います。
追い詰められてうつ状態になると、その空間での価値観がすべてと錯覚してきます。問題をうまく処理できないとそのつらさから道を踏み外した問題行動をおこしたり、最悪は命を絶つ人がでてくることもあるかもしれません。
おそらくは、うまく出口となる逃げ道を見つけるということが必要なのでしょう。極端な話、ずっとうつになる位つらい状態が続くのであればすべてを捨てて別の人生を生きるという選択もあります。
悩みを打ち明けずに抱え込むことは心を不安定にさせます。また、こと病気にかんしても同じように人に言えず自分の中だけでずっと我慢し一人で思い悩むということは本当によくないと思います。
自分の中だけ閉じこもって、問題をうまく処理することができないと頭の中でぐるぐると周りだしてしまい徐々に心と体の力を奪っていきます。
人に相談することは恥ずかしいとおもうのかもしれませんが、ずっと思いなやんで元気をなくしては困ります。
思い悩むような症状や症状があった時には、自分だけで抱え込まないで、遠慮せず口にだして心の逃げ道をつくっておくことは、病気の管理においても大切なことだと感じます。