院長コラム
Column
男性危機
2018年07月31日
NHKスペシャルで「日本精子力クライシス」というプログラムがありました。抗加齢学会から是非みてくださいという推薦のメールもありましたので録画・視聴しました。
先進国の男性の精子数は40年前に比較して半分以下に低下し、その運動低下率や奇形率が高く少子化の原因となっているのだという衝撃的な内容です。
特に日本は危機的な状態で、世界の科学者も心配しています。
加齢、ストレス、運動不足、動物性脂肪中心の食事は、男性ホルモン低下や酸化ストレスの増加をきたし、精子の傷害・形成低下や奇形などにつながります。いわゆるメタボになると性腺機能も低下します。
少子化の理由としては、保育所の不足や女性の勤務の問題がよくとりあげられていますが、根本的な生物学的な問題があるのです。
男性と同様に女性においても同じような不妊の原因があるのでしょう。
昔の貧しい時代には子供の数が多く、私の親の世代では5人以上、祖父母の時代では10人以上兄弟がいるというのがあたり前でした。
貧しくてお金がないという社会的な問題は少子化の直接的な原因にはかならずしもならないのかもしれません。
植物でも栄養の少ない不毛の土壌でそだてると多くの種を作るのだそうです。そういう意味では、現代のような豊かな時代では子供が少なくなるというのは古から引き継がれた自然の摂理なのかもしれません。
中年以降で男性ホルモンが急激に低下すると、いらいら、倦怠感、不眠などの自律神経やホルモンの不調に伴う様々な症状が起こり、男性更年期障害の原因となります。
ストレス、睡眠・運動不足、栄養不良による男性ホルモンの低下が多くの原因です。もちろんメタボとも密接です。
男性ホルモンが低下するから活動力が低下してメタボになるという悪循環もありそうです。
当クリニックでは不妊外来はしていませんが、男性更年期外来は行っています。
男性機能自体についての愁訴への相談は少ないようには思いますが、もちろん性機能低下の症状も多いにありです。動悸や息切れなどの症状や動脈硬化など循環器の病気にも関係していることもあります。
まずは生活の改善が大切ですが、ホルモンや自律神経のバランスをとるという点では漢方薬も有効です。おそらくは男性の不妊治療とよく似たところがありそうです。
男性ホルモンの低下を示している方にホルモンの注射を行うと多くの方の症状がよくなるので、注射の効果は絶大だと感じます。
中には全く働けなくなって自立できなかったが、めきめきと症状が改善し生活保護を返上したという方もおられるのです。
私自身、最近急にスイッチでも入ったようにいらいらすることがあります。妻から男性更年期障害だから困ると指摘されますが、おそらくそうなのだと思います。
程度の差はあれ、中高年になると皆さん更年期障害の症状を自覚されるのでしょう。
複雑な社会環境で本当にストレスの多い忙しい時代です。まずは男性ホルモンを意識した健全な生活を心がけ、それでも調子が悪い場合は適切な治療を受けておくということも元気で機嫌よく居続けるには大切な時代なのだと感じています。