院長コラム
Column
ヒートショック
2018年12月27日
年の瀬も押し迫り寒くなってきました。気温の変化も大きいせいか風邪で受診される方も増えてきています。
電車のつり革や扉などへの接触が原因となることが多いので、風邪の流行っている時期には意識して手洗いすることが大切です。そして風邪をひいている人はマスクの着用が拡散予防に必須ですよ。
風邪の原因はさまざまですが、ウイルス性と細菌性があります。
細菌性の風邪の場合は抗生物質が有効ですが、多くの場合はウイルス性です。インフルエンザウイルスでは特効薬がでてきていますが、その他のウイルス性の風邪の場合どうしても対症療法を行い、体の免疫の力に期待するということになります。
それではどのように風邪を克服していくのでしょうか?
風邪をひくと発熱します。微熱がつづく程度の風邪はだらだらと長引き、しっかり発熱した方がすっきり治るという印象ももたれているのかもしれません。
きっちり風邪を早く治すためにはきっちり体温をあげておくということは大切なのです。
風邪への漢方治療でも汗がでるまでは体を温める処方を行いますので、特に風邪の引き始めには体を温めるということはキーワードです。
発熱によりウイルスの増殖を軽減する蛋白質が誘導されますので発熱は風邪を退治するための防御反応とも言えます。つまり体温を高めるということは風邪を予防し、ひいても早く治す点でも意義は大きいのです。
手っ取り早く体に熱を発生するためには温かいお風呂に入るという方法があります。
私自身、少し寒気がして風邪気味かもと思った時に熱い風呂に入って、湯冷めをしないようにそのまま布団に入って汗をかくまで体を温めます。すると自然とそのまま風邪が治って急に元気になることがよくあります。
しかし、すでに高熱の人では逆に体に負担になること、湯冷めをするとがさらに弱ってしまうため注意が必要です。そして発汗による脱水にも注意ですのでしっかり飲水しておくことも必須です。
体に熱を与えると細胞から発生する蛋白質ではヒートショックプロテイン(HSP)が挙げられます。体の修復過程や免疫機能とも関係しますので、美容や癌の分野でもマスコミでよく取り上げられているので知っている方は多いのかもしれません。
さまざまなサブタイプがあるのですが、心臓や血管の分野ではHSP70のグループが心臓の保護などの過程に関係していそうです。
また心臓の機能が弱る心不全の状態になると手足の血管が収縮して血流低下して手足が冷たくなりやすくなります。そのため体を温めて血流を改善させることは大切です。
心不全の患者さんに温泉での入浴をすすめる日本の誇る和音療法の有効性は循環器病のガイドラインにも記載されているのです。
昔、同じ研究室の先生が、きっちりとした入浴習慣は心筋梗塞を起こしても程度が軽くなるので、あったかい風呂にしっかり入るようにと言っていたことも思い出します。
心筋梗塞の実験では、習慣的に入浴させたマウスでは梗塞サイズは小さくなったそうです。しかしあれから20年以上たちますが未だその真偽は不明のようですが。。
年末には寒波も押し寄せ、ますます冷え込むようです。
体を冷やして体調を崩さないようにくれぐれも体を温めておくことは大切ですので十分にご配慮ください。