院長コラム
Column
高齢では小太りに
2019年01月10日
登山家でプロスキーヤーの三浦雄一郎さんが、南米最高峰の山の登頂に出発されました。スキーでの滑降も予定されているそうです。
80代半ばの年齢にも関わらず、いつまでも本当に元気です。まさに高齢者の希望の星ですね。
健康の秘訣についてはマスコミにもよく取り上げられています。たくさん蛋白質をとり、よく体を動かすことが大切のようです。そのためか高齢の方には珍しい位に筋骨隆々のがっちりした体格です。
肥満の指標としては一般的にはBody Mass Index (BMI)が使用されます。BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]として計算できます。25以上は肥満傾向とされています。
しかしBMIは筋肉の割合は考慮されていないので、三浦さんは肥満に分類されそうです。私自身は実力で肥満傾向ですが。
中高年までの方ではいわゆるメタボの方が多いためか、運動や食事制限をして適正な体重になるように指導します。メタボの状態が続くと、癌の頻度も増加しますし、糖尿病・高脂血症・高血圧などの生活習慣病からの動脈硬化が進展するからです。
実際60歳未満では、BMIの低い痩せ型の方が病気の頻度は少なそうです。
しかし、そのまま歳をとってやせたままでいいのか?という疑問もわいてきます。BMIの基準は高齢者にはあてはまらないのかもしれません。痩せすぎはよくなさそうです。
実際、痩せているご高齢の方は、感染症や骨粗鬆症の頻度も増えてきます。手荒に扱うと壊れてしまうような弱々しさも出てきます。
空港の荷物で手荒にあつかうと壊れてしまうものにFragilityのタグをつけますが、英語でFragilityとはもろく崩れてしまいそうな虚弱なもののたとえです。
虚弱な高齢者をFragility→フレイルと呼ぶことが提唱されています。筋肉量の低下をサルコペニア(手足ガリガリ)といいますが、身体のフレイルはまずサルコペニアに引き続いておきてきます。
身体のフレイルだけではなく、認知のフレイル、社会性のフレイルも多面的に存在し、それぞれが負のスパイラルを形成して、要介護状態に近づいてくるのです。
そしてフレイルの状態でいることが最も生命予後の悪化因子であるとされています。
最近の報告では、痩せすぎはよくなく、特に65歳以上の高齢者では、BMIが少々高めのほうが元気で長生きするとされています。
病気を起こしたときでも痩せていると経過が悪くなります。例えば脳梗塞や感染症を起こした場合でも低体重の人はその時の死亡する場合が多くなるのです。
それでは単に体重だけを増やせばいいのでしょうか?
お腹周りがほっこりと大きいだけというのではなく、三浦雄一郎さんのように体の筋肉量を増やして体重を増やすということが理想です。
若い時は細いふくらはぎや大腿がモデルのようでクールなのかもしれませんが、歳をとってからは力強い太いふくらはぎと大腿がイケてます。
特に65歳を超えてからは、少々太りぎみでもいいというギアチェンジが大切なのだと思います。
最後に少し余談ですが、マスコミでも公表されているように三浦雄一郎さんは不整脈で苦しんでおられ、登山にも支障がでるそうです。
不整脈に対するカテーテル治療を複数回うけられ、それについては不整脈の学会でも体験談として講演されています。過度すぎるトレーニングは心臓に負担をかけ不整脈の原因となるので注意は必要です。