院長コラム
Column
バイオニック医療
2019年07月13日
人間の体は機械のように電気の信号をもとに情報伝達が開始し、それに引き続き生体の活動を行います。
電気のシグナルがうまくいかないと多くの病気を引き起こしてしまいます。
その異常な電気信号を適切に機械や電子機器をつかって処理することにより、病気をうまく治療することができます。
高度な機能をもった医療機器により病気を治療することをバイオニック医療といいます。
昔からアニメや映画などで機械により補強された人工人間となってヒーローが活躍していましたがそのイメージとも重なってきますね。
不整脈は最たるもので、心臓の電気的な異常により起こってきます。心臓へのペースメーカー治療は昔からある最たるバイオニック医療です。
最新のものでは、カテーテルを使って心臓の中に直接留置する小指の先位の大きさのリードのないペースメーカーもでてきています。
プログラムやモニター機能の向上、さらにはこれからのAIの導入によりどんどん進化していくのでしょう。
また、心臓移植は65歳以上の高齢者では原則行われません。そして移植適応と判断された場合でも人工心臓をいれた状態で待機している方もおられます。
昔は、感染や血栓症などの問題がありましたが、より長期にも安全に使えるようになってきました。
高齢社会を迎え、高齢の重症心不全の患者さんではさらに適応が拡大されるのかもしれませんね。
日経メディカルという雑誌にも特集されていましたので、心臓以外の分野のことについても書いておきます。
脳や神経の情報伝達も電気信号です。てんかんは脳の中に大きな電気の暴発が起こることにより、体中に電気が広がるように全身の痙攣がおきる状態です。
神経へのペースメーカーにより、電気を神経に送りこむことにより発作の多くを予防できつつもあります。
多くの神経の病気は、電気の伝達異常といえそうです。
そして視覚や聴覚も電気の信号により処理されます。
先天的に耳が聞こえない(聞こえにくい?)子供では、言葉の発達が遅いことも問題となります。
早期に人工の内耳を植え込むことにより耳が聞こえるようになることはもちろん、言葉の遅れなく成長するようです。
より小さい時からということが大切なキーワードです。
小さい時なら脳神経はいくらでも電気情報の処理過程を変化させる能力をもっているということなのでしょう。
特に1歳未満の子供ではたとえ指が切断されてもまた生えてくるとほど再生適応力が旺盛なのです。
目が見えない方に網膜に電極パネルを植え込むことにより、また見えるようになる展望もありそうです。
整形の分野では、手が切断されてしまった方でも再び者をつかめるようになりつつあるようです。
例えば肘より下の部分で切断された場合、上腕部の筋肉を支配する神経の一部と人工の義手を電極で結び付ける手術をすることにより簡単な手の動きができるようになるようです。
今でもパラリンピックでは義足や義手をうまくつかいこなして、競技をされていますが、これからもどんどん進化していくのでしょう。
「五体不満足」の本をだされ、現在マスコミでも活躍中の乙武洋匡さんもバイオニックの義足をつかうことにより最近は歩きだしているとのこと。
近い将来、乙武さんも五体満足な人と同じように街中を普通に歩けるようになりそうで楽しみです。