院長コラム
Column
医療差別
2020年05月06日
新型コロナウイルス感染のリスクに対し、世間の多くの人はかなり敏感になっています。
当クリニックでもすべての患者さんに入室時にアルコールによる手の消毒をしてもらい、スタッフはマスクとフェースシールドを着用としています。
風邪の症状がある方では隔離のスペースで診察し、濃厚接触がおきないように配慮しています。
診察中にも適宜アルコール消毒や手洗いをするようにはしています。そのため手が少しかさかさになってきました。
診察時間中でも聴診器、シールド、机、多くの人が触るドアノブなどを適宜アルコール消毒するようになりました。
気になりだすと、何かスイッチが入ったように潔癖になってしまうが衛生問題なのでしょう。
感染への恐怖や不安から強迫観念がでてきて、不潔、手洗い、アルコール、マスク、買い物の時など、自分以外ことが気になってしかたがなくなる人もいるかもしれません。
かかる場合、感染のリスクのある人や物に対して過敏になって拒絶反応を示してしまうのでしょう。
私の診断はコロナ恐怖症です。もちろんそのような病名はありませんが。
最近、ニュースで医療差別の問題が取り上げられています。確かに医療関係者以外の人からみると医療関係者は感染に汚染されて不潔と感じるのでしょう。
私自身、まわりの反応には無頓着のためか医療差別があるという意識はあまりなかったのですが、妻曰く「今頃なに言ってんねん。にぶすぎ。」とのことです。
確かに言われてみると私の仕事をしっている人には少し避けられているという気もしてきます。
コロナより世間の目が怖いという医療関係者もいます。
子供を保育園に預かってもらえない、子供が友達にいじめられる、SNSでの誹謗中傷、あげくのはてに医療関係者はマンションからでていけといわれた人もいるようです。
しかし子供を預かってくれないとますます医療が回らなくなるという悪循環もでてきますし、医療崩壊にもつながります。
もちろん医療関係者の感染リスクは高く、多くの病院で感染クラスターがおきています。イタリアでは今までに治療にたずさわった150人以上の医師がウイルス感染により命を落としています。
しかし、それでも多くの医療関係者は自らの感染リスクも受け入れて、献身的に病気に立ち向かっているのだと思います。
医療関係者に限らず自衛隊や消防隊など、自らの体を張ってリスクをとって社会貢献する人について日本人の目は少々厳しいような気もします。
好きでその道にすすんだのだからそのリスクは仕方がないという意見もあります。
一方、欧米諸国では、リスクをとって自国の社会に貢献する人に対し、理解、応援、感謝を示す人が多そうです。
海外では、新型コロナと戦う医療関係者は応援されるべきなのに日本では差別されているのが理解できないというニュースも報道されているそうです。日本にとってはよくない海外へのメッセージだと思います。
もちろん最近では、日本でも医療関係者に対して理解を示し、様々な方面から応援しようとする動きも増えてきています。
ウイルス感染への不安や恐怖から脅迫されコロナ恐怖症になると、その原因となりうる人への差別につながります。
その差別は感染から自分と身の回りの人を守る反応なのしょう。
しかしもう少し踏み込んで、差別された人はどうなるのか?その結果自分はどうなるのか?社会全体のためにはどうすればいいのか?などの想像力と冷静な対応が大切なのだと感じます。