院長コラム
Column

すすまないワクチン接種

2021年05月08日

新型コロナウイルスの第4波の蔓延により月末まで緊急事態宣言が延長されることとなりました。

しかし、緊急事態宣言がでているにもかかわらず、人出は相変わらず減っているわけではなさそうです。宣言も強制ではないので、感染に気を払わない人の行動は変わらないということなのでしょうか。自分のことだけでなく、もう少し周りを思いやるという気持ちも必要なのではとも感じてしまいます。

そのコロナ禍の真っ最中ではありますが、コロナワクチンの接種がはじまりつつあります。

東京オリンピックの開催の是非が論議される中、もう少し早い時期からワクチンの予防接種を開始することができればと少々悔やまれます。

ワクチンが確保されていても接種がほとんどすすんでいない現況に対して、多くの人は不満で批判する声も多そうです。

ワクチン接種の進め方は様々な意見があります。そしてその意見には、実践的な有効性のみならず個々の価値観や感情も関係しているのでしょう。

まずは高齢者への予防接種ですが、それに対しても意見は様々です。

ひと昔前では、多くの人が同意したのだと思いますが、時代変化にともなう価値観の変遷が、多様な意見につながっているような気もします。

医療関係者でも未だ2割程度の接種率です。私自身も4月末に1回目だけをうけた状態ですので、いまのところ未接種の分類です。国際的には、まずは医療・介護関係者からという意見です。

また、感染を広めているのは高齢者ではなく行動範囲の広い若年者であるので、若年例を優先すべきであるという意見もあります。確かにより蔓延抑制には実践的なような気がしますが、一方では自制をしている人からはそんな身勝手なという意見もありそうです。

大阪や東京などの大都市を中心にクラスターが発生し、それが全国へと蔓延しそうな気配です。

特に大阪では、重症者に対して適切に治療できないという医療崩壊の状態がつづいています。

まずは、東京や大阪などの大都市を中心に接種すすめて医療崩壊を防ぐべきだという意見もあります。しかし、地方の人からはまた大都市のために我慢をしないといけないのかといわれそうです。

恐怖が大きければ大きいほどそれぞれの意見は強固になるのでしょう。そして自分の意図に沿わない意見をうけいれがたくなるのかもしれません。

先日、昼の空き時間にテレビのワイドショーをみていますと、開業医が暇なのにさぼっているのでワクチン接種がすすまないのだという論調のコメンテーターもいました。

私自身、土曜日の午後の空いた時間に手分けをして接種場所に伺う予定ですが、楽をしないでもっと働けという世間の空気なのでしょう。もっと頑張らないといけないのでしょうが、既存の患者さんをほったらかしというわけにもいけません。

欧米ではあっという間にワクチン接種がすすんでいますので、うまく接種できないのはこれまでの日本型システムではうまく対応できないということもあるような気もします。

震災などの有事においても日本式システムの機能不全が指摘されましたので、スピードと馬力をもってすすめていける新たな仕組みを作り上げるも必要なのでしょう。

価値観が多様化する自由な民主主義の時代では、おそらくみんなが納得する意見というのはないのかもしれません。

うまくいかないのはすべて政治家の怠慢という批判意見も多いですが、世間の多様な意見を反映しているようにも感じてしまいます。

かつてアメリカのケネディ大統領による「国から何をしてほしいかではなく、何ができるかということを問うてほしい」という危機伴う変革期での自由と民主主義を問う名演説がありました。

単に批判を繰り返すのではなく自らが必要だと思うことをまずは行動し、一度きまったことは粛々と従う姿勢も有事には必要なのだということも感じてしまいます。

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