院長コラム
Column
やる気がなくても動いてみる
2022年12月15日
どうしてもやる気が起こらないので動けない、行動できないという訴えは、日常の外来でも時折ききます。
特に男性更年期の外来では どうしても体がしんどい、やる気がでないなどの症状もでてきます。
ホルモンや体調の問題もあるのでしょうが、それ以外のこともいろいろあるのでしょう。心と体のバランスも関係してそうです。
必ずしも病気というわけではなく、私を含め誰でもそれでもそれなりに日常で自覚することなのだと思います。
なんとかしたいものです。
「どうしてもやる気がでないのであれば休んだ方がいい」というアドバイスもあるのかもしれません。
一見優しい思いやりのあるアドバイスのように感じますが、本当によいかどうかは疑問が残ります。
もちろん心身が極度に疲弊していたり、病気が悪化して弱っているときには休息は大切です。
しかしやる気がでないからといって動かないでいると、罪悪感もでてきます。
そしてさらに力をなくしてしまうという悪循環にもなりそうです。
そもそもやる気とはなんでしょうか?やる気ってみんなあるのでしょうか?
やる気を出そうと願ったところででてくるものではありません。
やる気は意識で管理する大脳皮質ではなく、感情を管理する大脳辺縁帯の領域の状態に支配されているからです。
心や体の状態に依存して、なんとなくふあっと存在しているともいえるのでしょう。
神経生理学的にはたとえやる気がなくても、行動するしかないというのがよさそうです。
まず動きだすと、やっていることに興味もでてきます。そして気がつけば少しは面白くなってきます。
動きだすことによって状態を変えるということです。
そしてそれがさらなる次のステップにもつながるのでしょう。
まず動く、動きながら考える。そして小さなことでも気がかりなことが解決できれば心が満足して感情が安定するとも言えそうです。
海外では、「疲れてやる気がでない時にこそ走ってこい」と指導する国もあるそうです。
「弱っている人を目の前にして、まずは動けということは酷いことだ」という意見もあるのかもしれません。
それでも元気を取り戻すためにます動いてみるということです。原因でもあり、結果でもあるということなのだと思います。
「失敗しないようにじっくり考えてから慎重に行動をしなさい」という指導もあるのかもしれません。
しかしいろいろ考えだすとますます動けなくなるので、半分位よさそうならまずOKということでもよさそうです。
今までの経験上、少々思慮があさくとも行動力とコミュニケーション力のある人のほうが、石橋をたたきながら知識を積み重ねる慎重な人よりも元気で社会的にはうまくやっているような気がします。
大きなことだけではなく、身の回りの片づけなど目の前の本当に小さなことからでよいのでしょう。
動けない理由をいろいろ探すのではなく、理由がわからなくともまずは動いてみる。
そして気が付くと状態がかわりなんだか楽しくなって元気になっている、ということがいいような気がしています。