院長コラム
Column

感情には感情を

2023年01月16日

どうしても腹が立ってしかたがないことは誰でもあります。

思い通りにいかなければ、腹が立つものです。その程度が強ければ暴走して、トラブルにもつながりそうです。

日常の診療でも腹がたってしかたがないという訴えは時折ききます。言われてみると診察にても知らずに気を害しているのではと気にもなってきます。

歳とともに抑制がききにくくなるということもあるのでしょう。

もちろん怒る理由があるので、その原因を解決するのは大切ですが、必ずしも過剰に反応する必要はありません。

なんとかその場だけでも上手く対応していきたいものです。

深呼吸をする、体を動かす、その場から離れるなどもよく言われるアンガーコントロールの手法ですが、怒りが大きければなかなか収まらないかもしれません。

話をきいてもらうだけでも徐々に怒りは癒されますが、その立ち直りにはそれなりの時間がかかりそうです。

怒っている人を目の前にすると、その不条理さを説明して諭したくもなってしまいますが、怒っている人を論理的に説明しても納得してくれません。逆に怒りに火をつけてしまいそうです。

つまり感情は論理ではコントロールできないということです。

脳の中では、論理的な思考を管理するのは大脳皮質であり、感情を管理するのは大脳辺縁系ですので、それぞれ独立した別の場所だからです。

しかし、怒りが収まらない時、突然に目の前に車が突っ込んできたらどうでしょうか?

その衝撃への驚きや恐怖により怒りの感情は一瞬にして消えてしまいます。

また、ぼったくられたと腹がたっている時に、多くのやくざに急に囲まれて、暗闇につれていかれて拳銃を突き付けられたらどうでしょう?

おそらく、怒りはすぐさま恐怖へとかわってこちらの方から謝ってしまうのかもしれません。

確かに昔から、サービス業のトラブル処理では、喧嘩自慢の大男、色気タップリの美女が定番です。

大男は恐怖を与え、美女は色気を与えることによって暴走した感情をおさめてトラブルを処理しやすいといえそうです。

おそらく恐怖や色気以外の様々な感情への変化が怒りの軽減に影響を及ぼすのだと思います。

感情が暴走しているときには、早々に心の状態をかえるには別の感情で打ち消すしかないとも言えるのかもしれません。

怒りだけではなく、悲しみについても同様なのでしょう。

感情の相性もありそうですが、やはり笑いや喜びが、少々ゆっくりではありますがその後の心を癒してくれてよさそうです。

いずれにしてもどうしても怒りが収まらない時、少し視点をかえて興味や感情をいれかえてみる。

そして、時間がたてば気が付くとなぜかばかばかしくなってその怒りも安らいでいるということがいいような気もしています。

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