院長コラム
Column
ストレスなく長生きを
2024年11月27日
30年近く前の大学院生の時代、同じ研究室の同期の先生が「心不全への運動療法は寿命を延ばすのか?」ということを実証するため遺伝的心不全のマウスを使って実験をしていたのを横目でみていました。
定期的にベルトコンベヤーの上を走って運動してもらう群とそうでない群との比較です。
今でさえ心不全患者さんへのリハビリは当たり前のように行われていますが、当時はよくわかっていないという時代でした。
必要以上の運動療法はマウスにとってかなりのストレスのようで、ストレスが多いと周りや自分を攻撃するのです。
運動療法の効果は期待した結果とはいかなかったのですが、ストレスはかなり寿命を縮めてしまうのは間違いなさそうです。それとマウスへの運動調節はとても難しいということも。
その他にもマウスにストレスを与えつづけると寿命は短くなるという報告はいくつかあります。ネコに見つめられたまま飼育されたマウスはすぐに死んでしまうのです。
おそらく人間にも当てはまるのでしょう。特に歳をとってからのストレスはかなり体にこたえそうです。
しかし、アフリカのハダカデバネズミだけは通常のネズミ(マウス)より10倍は生きるとされています。
それはなぜなのでしょうか?ストレスが少ないのでしょうか?
もちろんいくつかの理由が推察されるのですが、このネズミの細胞内ではセロトニンの濃度が高くなっているのが長寿の理由一つではと推察されています。
癌にもほとんどならないそうです。
それではセロトニンとはなんでしょうか?
セロトニンは神経の伝達物質ですが、セロトニンが増加すると心が安定して幸せを感じるとされています。
睡眠に大切なメラトニンの材料にもなります。
いわゆる幸せのホルモンともいえそうです。
最近よく使用されている抗うつ薬(SSRI)も脳内のセロトニンの効果を増強させることによりその効果を発揮するのです。
一方、ストレスによりその働きが不調に陥ることで脳の機能不全が引き起こされると
セロトニンの分泌量や作用が低下し、その結果意欲の低下、不安やいらいら、不眠などの症状があらわれます。
セロトニンを増やすには、
・ウォーキング、ストレッチ、筋トレなどの適度な運動
・タンパク質 肉や魚の摂取
・外出 日の光を浴びる
などがあります。
ストレスなく幸せだと感じられる健康的な生活習慣が長寿にとっては大切なのでしょう。