院長コラム
Column
入浴中の事故
2024年12月25日
急に寒くなってきました。寒い中ではあったかいお風呂につかりたくなりますが、いくつかの注意点はあります。
入浴中の事故で命を落とすリスクが高いきわめて高く、交通事故でなくなられる方の2倍にものぼるからです。
最近では、歌手で女優の中山美穂さんが入浴中のトラブルで他界されました。もちろん私自身他人事ではありません。
なにが原因?と多くの人は気になります。
「サスペンスドラマのような犯罪では?」ということも思い浮かぶかもしれませんが、法医学的にも風呂場の死亡は病死や事故がほとんどだそうです。
入浴中でいくつかのおもいつく注意点をあげておきます。
まず入浴時には、足元がすべりやすいので要注意ですね。風呂場の事故が致命傷になりえます。
ジャイアント馬場選手も入浴中に足を滑らせて投手生命を絶ちました。古すぎる?
若いころは体が柔軟ですので、少々転んでも大丈夫です。しかし、年配になると体が硬いために受け身も困難ですので大けがにつながります。
また、冬の寒暖差が大きいとヒートショック効果による循環器系のトラブルには特に注意です。
もちろん身体をあたためること自体は心血管の拡張作用もあり、心臓・血管にも保護的にはたらきます。
しかし、急激な温度の変化は過度な血管の収縮・拡張をきたしますので、血圧が乱高下や心臓の負担増加にもつながります。その結果、心筋梗塞・心不全・脳卒中の出現には注意が必要です。
また、循環器病では不整脈もきになります。
急激な血圧変化や体温の上昇による不整脈の増加が危惧されます。
心臓病の方はもちろんですが、一見健康に問題のないような方でも注意が必要です。
遺伝性不整脈や心電図にて再分極障害がある方は(ブルガダ症候群など)、高熱により心電図の障害程度が大きくなり不整脈が出現しやすくなります。
いわゆるぽっくり病といわれる若年の突然死の原因です。かかる患者さんでは高熱の長湯には注意が必要なのでしょう。
さらにアルコールを多量に服用すると不整脈の出現はさらに増加します。アルコールは催不整脈作用が強いのです。
あまり知られていないかもしれませんが、不整脈専門医からのウンチクです。
「身体をあたためるのはいいが、熱すぎず、寒すぎず。風呂場では無理をしないで慎重に。」というのは循環器病を未然に防ぎ、健康に長生きをするための知恵なのだと思います。