院長コラム
Column
2025年問題
2017年10月02日
医療の世界では2025年問題と言われ、よく取り上げられ問題となっています。お金の問題と関係しますので他の分野でも知られているのかもれません。
2025年の日本は、人数の多い団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上という、人類が歴史上経験したことのない『超超高齢社会』を迎えるという問題です。
現在、医療費は年間40兆円を超えています。今のままの体制では2025年には医療費はさらに10兆円以上増加し、年金や介護を含めた社会保障費全体では150兆近くになるそうです。ちなみに国債を含めた国家の予算が100兆円にも満たないので、赤字がどんどん膨らんでいくのがわかります。
国の借金が1000兆円を超えていますし、今度の選挙でも借金の埋め合わせはしないことが公約となっていますので、この国は本当に大丈夫?という気もします。池上彰さんがニュース番組で最後は皆さんがこつこつと頑張って貯めた個人の貯金で埋め合わせするしかないのでしょうとさらりと解説されていましたので、まさに他人事でなくなってきています。
昔、老人の医療費は無料でした。老人の割合が少ない場合はそれでよかったと思います。いままで苦労してきたのだから、私も含め無料は当然と国民の多くは同意していました。自己責任であるはずのお金の問題が、今働いている人が老人を支えるというというシステムにもなりました。
しかし、3人に1人が老人だと維持することができません。私が小さい時には、お年寄りを大切にというのが当たり前でしが、最近では少し若い人がかわいそうという意見もでてきています。
以前、海外の医学の学会で、隣に座っていたヨーロッパの方に日本の医療について聞かれたことがありました。日本が超高齢の方に手厚い医療を行うことがあたりまえと思っていることが不思議なようで、よほど日本という国はお金持ちですねという意見でした。
欧州各国によっていろいろ事情は違うようですが、ある年齢を超えた高齢の方の医療は自費負担のところが多いということでした。寿命というものを感情ではなく、現実の問題として受け入れているように感じました。
日本は戦争の苦い経験から、「人の命は地球よりも重い」と人道的な教育がなされ多くの人がその理念に共感してきました。医療もその理念のもと多くのスタッフは身を粉にして頑張ってきたのだと思います。しかし、その思いが無条件に医療費の増大を招いているのかもしれません。
医療費の削減には、医者の給料を安くしたら解決するという乱暴な意見もありますが、安全で良質な医療を確保するためには多くのコストがかかるというは構造上の問題のような気もします。そもそも今の時代、多くの人が思い描いている羽振りのいい医者の多くは自費診療をされている方です。
2025年は今から8年後、そんなに先の話ではありません。国民として医療・健康ということについて、現実的にどのように対応していくのかの判断を迫られる時期が近づいてきているのだと感じています。