院長コラム
Column

AIと医療

2017年11月13日

最近 人工知能(Artificial intelligent; AI)が多くの分野に広まりつつあります。AIが人間の囲碁やチェスのチャンピオンにも勝利しましたが、AIはいろいろ学習して進化してきました。身近な作業もAIとロボットが管理する時代が近いうちに到来しそうな勢いです。

最近でも声を出して指示をするだけでそれを理解して反応するAI端末が導入され、アメリカではすでにかなり広まっているようです。天気、交通情報など思いついて言葉にだした質問にすべて答えてくれ、音楽も思い通り再生されます。AIの語学認識能力については、すでに人間の聴力を凌駕しているようです。

情報化社会で科学技術を否定することはできません。より便利に!、より生産性を高く!、より競争力を!、ということでAI推進の流れはどんどん広まっていくのだと思います。

昔、コンピューター(PC)が導入されてきた時には人の職業をとって変わるという議論がありました。結果的にはPCは人間が使用することにより、社会を能率よく便利にし、新たな職業も創出しました。

一方、AIは本来人間がするべき考える作業を担うというところまで進化していくのであれば、AI自体が人間に置き換わってくる可能性もありそうな気がします。

AIの登場により、今の生まれてくる子供が大人になる時には、現在の職業の7割はなくなり、別の形のものになっていくのだとか。ますますお父さんの威厳を保つのが難しい時代になりそうですね。

AIは医療・介護についてもどんどん広がっていきます。身の周りで気づいたところをいくつか挙げてみます。

先日出席した主治医意見書の説明会では、介護の認定には麻痺や生活制限などが複雑にからみ人で認定することが困難で労力がかかることから数年後にはAIが管理していくそうです。

また現在の診療報酬の審査についてもAIが管理していくようです。過去の医療請求のパターンと照らし合わせ、まずAIが問題を指摘し、その要否を判断していきます。

まずは巨大な医療データを処理し、解析するという実務分野から適応されていくようです。そして過剰請求やいい加減な医療はできなくなりますよというメッセージも含まれています。

少し前に出席したアメリカでの心臓病学会では、AI管理された車の運転中の心電図波形で運転中の事故の原因がわかるようになるとか、電極のついたオシャレなTattooシールを肩に張ることでそのデータが転送され、心臓の状態が管理できそうだという不整脈のセッションもありました。

日常診療でもまずはレントゲンの画像の読影など、診断の補助というところからどんどん取り入れられてくるのだと思います。クリニックでもAIロボットが受付案内をするところもあるそうです。また、新薬の開発も今後はAIが膨大なデータを処理し、有効性や副作用を判別していきます。

11月1日付の日本経済新聞で、2030年までのAIとIoT(Internet of Tool)ロードマップ予想という記事が載っていました。医療分野のところを書いておきますと

2020年 癌を診断 食生活や運動習慣から病気を予防

2022年 いたわりや手加減ができるロボットが介護や調理・掃除で活躍

コンタクトレンズ型ディスプレーが視界に映像を投影

2023年 血管内を移動する微小な医療ロボットの実用化

2024年 人間の脳と同等の情報処理ができるシステムが登場

2025年 高齢者らの自立を支援するシステムの稼働

2027年 頭で念じるだけでコンピューターを操作

2030年 着るだけで体調のわかる衣服の普及

その他の分野でも2030年までには料理、学校の教育、タクシーの運転、配達などもAIが担っていくのだとか。

少し前に送られてきたクリニック向けの雑誌では、長崎のハウステンボスを立て直した旅行会社のHISの社長さんの話が特集されていました。

従業員数人だけ残し、その他をAIが管理する維持コストの少ないホテルがうまくいっているので、これからどんどん全国にホテル展開していくようです。今後医療分野に参入し、近い将来には、診断はすべてAIが行い、医師がいなくても大丈夫にしたいという旨の記事でした。これからのクリニック運営についての説明会も行いますので、興味があれば参加くださいと申込書もついていました。

自分の居場所がなくなっていくような気もする少しさびしいような記事内容ですが、時代の流れにうまく適応していく必要があるのでしょう。このような話は医療以外の多くの分野であるのだと思います。

しかし、AIにすべてを管理されていくようで、映画の「マトリックス」や「ターミネーター」などのようにAIとロボットが人間の能力を凌駕して支配する時代がくるのではないかという気もして少し怖いような気もしています。

AIの登場により今までの常識が変わり、どんどん効率よく便利になっていきます。もちろん便利になることはいいことですが、それを追求し続けて便利にはなったが、気が付いてみれば人間としての大切なものを失い、多くの人が不幸になってしまったということのないようにうまく共存共栄していけることを願います。

一覧に戻る