院長コラム
Column

こころと心臓  

2018年02月10日

 

心臓は心(こころ)の臓器と書き、昔こころは心臓にあると考えられていました。英語でもこころも心臓もHEARTです。

感情を揺さぶることがある時には、心臓の鼓動は強くなり、そして胸に手をあて、心臓の音を感じていると不思議と感情も落ち着いてきます。

こころを込めた思いというのは感情を含めた体の奥底からでてくるものなのでしょう。そしてこころは心臓の中にあるのと感じるほその関係は密接です。

もちろん、物を考えるという作業は脳で行います。人類に特徴的な知的に考えるという作業や理性は大脳皮質(特に前頭葉)という脳の表面の部分の役割です。

人間以外の動物では大脳皮質の部分が未熟なので、深いことを考えるたり、理性を保ちつづけるということが難しそうです。

脳の深部には大脳辺縁系が存在し、欲望や喜怒哀楽などの感情を管理しています。犬や猫を含めた多くの哺乳類はこの部分は発達しているので、人間と同じく感情を持っています。

さらに脳の中心部には循環や呼吸などの生命の根本的な中枢である脳幹部位があります。人類は進化の過程で、脳幹部位→大脳辺縁系→大脳皮質と脳の機能を広げてきたのだともいえるのでしょう。

脳幹部の中でも視床下部といわれる部位は、自律神経系やホルモンの分泌の中心であり、大脳辺縁系との関係が特に密接です。大脳辺縁系での感情の起伏は自律神経やホルモンの活動は強く影響を与えているのです。

そして脳幹部は脊椎につながり、脊椎の周囲に存在する多数の自律神経節からの多くの神経線維が幅広く心臓に分布します。

つまり、喜怒哀楽などの感情の変化は、自律神経やホルモンを介して心臓が鋭敏に反応するしくみになっているのです。

しかし感情や自律神経の活動というのは頭の中の理屈では説明できないものです。悲しい時に元気になれと頭の中で念じても感情はすぐにはもとにもどりません。感情や自律神経というのは意識や理性とはある意味で独立しています。

たとえ理性により感情をある程度制限できたとしても、長期的な我慢が続きすぎると大脳辺縁系―自律神経活動は不安定になり、自律神経の暴走による体の不調をきたしてしまいます。

病気を治療することにおいてもこころの管理はとても大切です。感情が不安定な状態で病気のことが心配で思い悩むと症状も悪化しますので、こころを安定させ整えることは病状の管理には必要なのです。

心臓の病気の中でも特に不整脈はこころの状態と密接です。同じ不整脈があっても気になって仕方がない人と全く気にならない人がおられ、その反応もさまざまです。こころに不安や心配が強いとどうしても動悸などの症状が気になってしまうものです。

そしてこころの不安が強いと不整脈も実際増加します。不整脈の症状はある意味こころの病気だという先生もおられます。

病気のみならずこころも管理していきたいという思いは当院の理念です。他科の先生から神経科や心療内科と間違えるとご指摘をうけましたが、それでも名前はあえてのハートクリニックです。

病気の治療も当然ですが、こころに安らぎを感じた時に人は癒され本当の意味で病状も改善するのだと思っています。

もちろんこころの問題は複雑ですので、簡単には解決できないことも多々あります。それでも胸に手を当てると気が落ち着くがごとくこころの安らぎとなり、その癒しにより笑顔がうまれるような手助けがすこしでもすることができればという想いです。

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