院長コラム
Column
I o B
2018年04月23日
「明日スキーに行きたいね。」という会話をすると、すぐさまスキーに関する広告が届くという時代が近いうちにもくるという記事が少し前の日経新聞の一面記事に特集されていました。
言葉を理解するAI端末がひろがりつつありますが、その情報を拾い上げ、それに関係する広告企業とリンクさせるというビジネスモデルです。
広告の費用対効果を考えた時には、関連する情報を発信した人に直接アクセスすることは従来のものに比して倍以上の価値をもつそうです。
プライバシーの問題もありますし、何か管理されているようで少しいやな気もしますが、一度この手のシステムを利用した人は、その便利さから手放せなくなる可能性が高いのだそうです。
確かに今でもネットニュースでは、一度目を通した内容にリンクする情報や広告が優先され表示されますし、スマホで検索したことは、自宅のパソコンでもその履歴として記録されています。
20世紀は石油の時代と言われ、メジャーといわれる欧米の石油会社が黒いダイヤモンドと言われる石油を支配し、産業の中心で巨額の富を得ました。
これからは巨大な情報が石油のかわりに産業の中心となり、その中心プレイヤーのGoogleやAmazonなどの巨大情報のデータを扱う数社の株価は、全盛期の石油メジャーの会社の株価を凌駕しています。
そして、あらゆる「もの」がインターネットにつながることはInternet of Tool (I o T)ですが、I o Tの次は「体」がインターネットにつながるInternet of Bodies(I o B)の時代だそうです。
体の情報を取り出すにはいくつかの段階があります。まずは体に装着した機械によってその情報を取り出します。最近では、スマートフォンやapple watchなどでも心拍数、体動、運動量などをモニターするようになってきています。
循環器領域では、例えば睡眠時無呼吸では呼吸補助の機械を寝る時に装着します。その情報は自動的にInternetにつながり、どれくらいの割合で機械を使用され、呼吸がとまっている時間がどれくらいかということが診察室のパソコンに転送されてきます。
その次の段階は体の中に記録デバイスを植え込むというこころみです。
IDチップを体内に植え込んで迷子になってもGPSですぐに見つけることがペットなどでも一部普及しつつあるようですが、リスクを理由に自分の子供にもチップを植え込みたいと希望される親もおられるのだとか。
循環器領域では、重症の不整脈や心不全の患者さんにペースメーカーを植え込みます。最近のペースメーカーでは、ネットを介する遠隔モニタリング機能があり、新たな不整脈がでていないか?ペースメーカーの機能に問題はないか?などを診察時にパソコンで閲覧できます。
心不全が増悪してくると肺に水がたまってのですが、ペースメーカーにより肺の抵抗の値を測定して肺の水分の割合を割り出し、心不全の状態を評価できます。心不全の増悪が疑われる時にはEメールによる担当医への緊急連絡機能もあります。
失神した人や原因不明の脳梗塞患者のかたでは不整脈を3年間連続モニターできる植え込み型のデバイスも保険適応されています。とても小さく注射のようにさして注入するだけで簡単に留置可能です。
コンタクトレンズも進化していくようです。涙により血糖を測定し、微小な電流の変化により血圧と心拍数をモニターし、インターネットに接続できるものが2020年過ぎあたりより出てくるそうです。
そして最終的には、頭の中に機械をいれて脳の神経の電気的な活動をモニターするという段階になるそうです。さすがにここまでくるにはハードルが高そうですが。
しかしまだまだ先の話と思っていても、いったんブレークスルーが起きると科学技術の進歩は速いのでどうなるかわかりません。人の考えや体の調子を感知しそれに応じた広告が自然と入ってくる時代が遠くない将来にくるのかもしれませんね。