院長コラム
Column
入学差別
2018年09月15日
東京医大では男性にくらべて女性の合格率が低いと新聞でも取り上げられています。実際の点数の操作もあったようです。
男女別の合格率の差が新聞にも掲載されていましたが、多くの医学部では男性の合格率が高いようです。
医師の仕事は無理をしないといけないことが多いので、女性では体力に不安があるという心配もあるそうです。年齢差別もありましたが同様の理由なのでしょう。
この記事がでるまで男女差別、年齢差別をあまり意識はしたことはありませんでしたが、知る人にとっては当たり前という意見もあるようです。
一部の限られた人での話ですので、大々的に取り上げられていることは少し不思議な気もしますが、おそらく女性の社会進出の妨げの象徴として取りあげられているのでしょう。
参考のため私の出身大学のことを書いておきます。私は地方国立大学である三重大学に入学・卒業しました。
当時、2割位が女性でした。
男性だから入学できたの?と言われてしまいそうですが、試験前の時点からすでに女性は少なかったように思いますので、そうではないと信じたいです。当時は女性の多くは文系を目指しました。
医学部は暗記しないといけないことも多いし、やっていることは文系だと思うのですがこと入試となるとなぜかばりばりの理系です。
女性はきっちりと授業にもでて、概して成績は優秀です。留年したり、学校に来なくなってしまう人はたいがい男性です。女性は堅実で安定しているというイメージです。
関西在住の大学同窓会があり、大学の現状報告をしてくれました。最近ではSNSでも情報を発信してくれます。
最近では理系の女子(りけじょ)が増加し、いまでは半分近くが女性だそうです。女性のパワーがうまく発揮されないといけない時代です。
そして、勉強はさておき運動の方は頑張っているそうです。
医学部ではカリキュラムの特殊性に合わせて独自に運動クラブを運営します。
年1回にすべての医学部の運動部学生が参加する西日本医科学生総合体育大会があり、それを一番の目標に日々トレーニングを積みます。
今年は総合優勝したそうで、最近は常に上位の常連だそうです。そして、その功績のほとんどが女性パワーなのだとか。
女性のほとんどは運動クラブに入り、全学と同じくらいの練習メニューをこなす学生も多いのだとか。
少なくとも母校では体力のある女性がどんどん増えているので、世間の心配は無用のようですね。
また、おそらく男女差別以外にもいろいろな選別差別はあるのだと思います。金銭的な問題もその一つです。
そもそも私立の大学では入学に際し多額のお金が必要になりますし、都会の有名難関大学に入学する人の親はお金もちが多いそうです。
アメリカでも多くの有名大学は多額の寄付金を払うと入学できると聞きますので、お金がないと勉強のノウハウや機会を十分に得ることができないということもあるのかもしれません。
昔、亡き父から学校にちゃんと行かせてもらっていることを感謝しろとよくいわれました。
当時はまわりのみんなはあたり前のように高校や大学に進学しているのにと、恩着せがましいようで少々いやな気もしました。
しかし父の時代では皆が貧しく、中学の同級生で高校に進学させてもらえたのはクラスで2人だけだったそうです。昔は家の事情で勉強したくても進学がかなわなかった人が多かった時代でした。
日本以外の国を見渡すと、教育をうける機会を十分に与えられていない発展途上国も多々あります。あたり前と感じていることも世界の中ではあたり前ではありません。
あらためて今の仕事ができているのは、親がちゃんと教育の機会を与えてくれたからだと感謝します。
公平な入学ということはさまざまな尺度があるので、なにが正しいのかは私にはわかりません。
医学部でも推薦入学や地域枠というのもどんどん増えているようですし、そもそも医者になる人は試験で選別するのではなく、人間的に誠実な人がいいという意見もあります。
おそらく医療は公共サービスの一つなので、それぞれの時代でのニーズと価値観で判断されるのでしょう。
最近、日本でも貧困を理由に子供に十分な教育を受けさせられない家庭も増えているという二極化の問題も聞きます。少なくとも昔の時代に逆行することなく教育はすべての人がうけられ、希望する職業をめざす自由だけは保たれてほしいと感じます。